Ads by Google
新しい記事を書く事で広告が消せます。
第7章〜今そこにある危機〜
川鍋は2人組みの全身黒尽くめの男達に囲まれながら歩いていた。どこへ向かうのか?川鍋にはだいたい分かっていた。しかし彼らの誘導する通路は川鍋自身全く知らないものだった。間違いない「伏線」ってやつだ。なぜルートをくらます必要があるのか?彼には理解できなかったが、何も言わず男達の誘導する方へと歩いていった。彼が実際に歩いていた時間は僅か2、3分であろう。しかしそれが1時間にも2時間にも思えた。いわゆる「逆浦島太郎現象」というやつだった。何か途轍もなく、途轍もなく異常な事が起ころうとしている事を彼はその肌で感じ取っていたのだ。
やがて狭い通路から広い通路に出た。彼の思った通りそこは情報部に通じるメイン通路だった。しかしそこは明らかにセキュリティゲートの内側だった。Acoustic Cinema Art Works内でも特にセキュリティの高い情報部。調査部と連動しているこの部署は、まず情報部・調査部連動のセキュリティゲートを通過し、その後各部に分かれる1本通路があり、その先に更に各部のセキュリティゲートがあるのだ。しかたって同じ連動部内でさえも、情報部・調査部を行き来できるのは僅かな人間である。ましてや他部門ともなれば入館が容易に許可されるものではなかったのだ。そのあまりのセキュリティの高さに、「サンクチュアリ」とまで呼ばれていた。
そんなセキュリティの高い情報部、彼がいたのは紛れもなくセキュリティゲートの内側だった。もちろん何らかのゲートを通った訳ではない。ゲートを通過せずに内部に入るのは不可能であるが「伏線」がその不可能を実現したのである。ちなみに今来たルートを覚えても無駄である事を川鍋は百も承知していた。この情報部に通じる伏線に入り込んだ瞬間、誰であると間違いなく消し去られるからだ。
彼らは通路の先に進むと情報部のメインフロアへと入室した。実は川鍋は以前この情報部にも所属していた事があり、情報部内は馴染みが深かった。しかしその日の情報部は異様な雰囲気に包まれていたのだ。メインコントロールルームへ入室すると正にそこは戦場のような雰囲気を放っていた。いかに情報部といえ連休になるとスタッフも減り少し落ち着いた雰囲気になる。しかしこの日のメインコントロールルームには通常時よりもスタッフが多かったのだ。よく見るとヘッドフォンをし、ファンキーな格好をしている奴。ゴルフクラブを担いでいる奴。ギターケースを持っている奴。中にはひょっとこのお面を被っている奴もいた。なるほど、みんな休日を切り上げ急遽この情報部に舞い戻ってきたに違いない。やはり何か非常事態が起きたのだと川鍋は確信した。スタッフは入室してきた川鍋の方を見ると皆一礼した。別に驚いた表情はない、まるで川鍋が来たのが当たり前のような感じだった。
彼らはメインコントロールルームよりも更に奥に進んだ。もちろん奥に行けば奥に行くほどより機密性の高い部署になる。それだけ入室も制限されるのだが、このIDすら持たない黒尽くめ男達は何をする事もなくただ進むだけだった。ただそれだけでゲートが何も言わず勝手に開くのだ。ゲートにいるセキュリティスタッフも一切こちらを見る様子もなかった。そうまるで彼らが透明人間であるかのような、そしてゲートにも何も起きていないような正に異様な光景だった。しかし川鍋はそれら全てを理解しているようだった。
やがてあるゲートを越えると何もない閑散とした1本の通路にでた。すると身長180cmくらいの男が言った。
男1「我々の役目はここまでです。ここから先の侵入は我々も許可されていないので。」
その言葉に続いてもう片方の身長180cmくらいの男が言った。
男2「この先に何があるのか・・・あなたは分かっているかと思います。全てはこの先にあります。」
2人はそう言うと川鍋に一礼をしてその場を去った。長く続く通路。静まり返ったその空間には沈黙の中にも、重苦しい空気が流れていた。やがて川鍋はゆっくりと歩き始めた。その1歩1歩がやけに重かった。昔ある漫画で「究極の護身とは、危険が自分の身に及ぶ事を事前に察知し、それから回避する事だ」というような話を読んだ事がある。危機管理業務に携わっていた頃、幾多の修羅場を潜り抜けていた川鍋。とりわけ危機的状況に敏感になっていた。そんな川鍋の身体は明らかにこの先に行くのを拒否していた。しかしこの先に待ち受けているものに自ら身を投じる事が職務をまっとうする事であるという気持ちから彼はその重い足を前へ前へと進めていったのだ。
やがて大きな扉の前に辿りついた。この先にはある部屋がある。不思議な事に本来いるはずのセキュリティスタッフはこの扉の前にはいなかった。
「ふぅ〜っ」と川鍋は大きく息をついた。やがて全てを決心したかのように正面を見ると、扉に手を触れた。すると扉はゆっくりと開いたのである。扉は横開きにゆっくりと開いていった。その先には部屋があるようだったが暗くて何も見えなかった。川鍋は扉が開ききるまで待った。ほんの数秒がやけに長く感じる。扉は音もなく開いていったが、川鍋には重苦しい岩の扉がギシギシと音を立てて開いていくようにも思えた。やがて扉が開ききると、川鍋は再び「ふぅ〜っ」と息を付き先へと進んだ。中に踏み入れて彼は初めて気づいた。やけに大きなその空間は奥にある部屋の前室だったのだ。一体どれほどばかりにセキュリティが高いのであろうか。恐らくこの先には極めて高いレベルのスタッフしか足を踏み入れる事ができないのであろう。暗闇の中目の前に1本伸びる通路だけが、その先の扉へと伸びていた。ゆっくり、ゆっくりと先へと進む川鍋。ここへ来て彼は額や背中にじっとりと汗をかいているのを感じた。彼自身冷や汗などかくのはあの「2007Worksビッグバン」以来であった。あれから2年経ち格段にスキルのあがった彼が冷や汗をかく程のもの、それは想像を絶するものに違いないと彼は感じていた。
1歩1歩ゆっくりと、しかし確実に前へ進むとやがて目の前に壁が現れた。「行き止まりだろうか」彼は一瞬考えたが直ぐに目の前にあるキーボードをみつけた。それはちょうどパソコンの10キーと同じく10個の数字が並んだキーボードだった。彼はそのキーボードに手を伸ばすとなんの迷いも無く数字を打ち込んだのだ。彼自身無意識のうちにその番号を押したに違いない。危機管理エキスパートである彼の身体がその数字を押させたのだ。
やがてその壁は彼の目の前で真ん中に割れ、音も無くゆっくりと開いた。中から冷たく重苦しい空気が彼の身体にぶつかるように流れてくるのを彼は感じた。その威圧的な空気に圧倒され倒れそうになるのを必死でこらえながら彼は開き切るのを待っていた。
やがて壁は完全に開いた。しかしまたしても中は薄暗くうかがい知れる事はできなかった。「やはり、自らの足で進むしかない。」そう決心した彼は「ふう〜っ」っ大きく息をつくと中へと歩き出した。やがて彼の視界に飛び込んできたものは大きなスクリーンと円形のテーブルだった。彼は確信した。
「間違いない。ここは危機管理対策室だ。」
そう思った直後だった。彼は人の気配を感じた。良く見ると一番中央の奥に人が座っているのが見えた。いや、奥だけではない。テーブルを囲むように何人かの人間が座っていたのだ。彼が再び歩を進めようかとした瞬間、一番奥の男が声をあげた
「遅かったな・・・」
彼のその声に川鍋は驚き言葉を失った。
やがて狭い通路から広い通路に出た。彼の思った通りそこは情報部に通じるメイン通路だった。しかしそこは明らかにセキュリティゲートの内側だった。Acoustic Cinema Art Works内でも特にセキュリティの高い情報部。調査部と連動しているこの部署は、まず情報部・調査部連動のセキュリティゲートを通過し、その後各部に分かれる1本通路があり、その先に更に各部のセキュリティゲートがあるのだ。しかたって同じ連動部内でさえも、情報部・調査部を行き来できるのは僅かな人間である。ましてや他部門ともなれば入館が容易に許可されるものではなかったのだ。そのあまりのセキュリティの高さに、「サンクチュアリ」とまで呼ばれていた。
そんなセキュリティの高い情報部、彼がいたのは紛れもなくセキュリティゲートの内側だった。もちろん何らかのゲートを通った訳ではない。ゲートを通過せずに内部に入るのは不可能であるが「伏線」がその不可能を実現したのである。ちなみに今来たルートを覚えても無駄である事を川鍋は百も承知していた。この情報部に通じる伏線に入り込んだ瞬間、誰であると間違いなく消し去られるからだ。
彼らは通路の先に進むと情報部のメインフロアへと入室した。実は川鍋は以前この情報部にも所属していた事があり、情報部内は馴染みが深かった。しかしその日の情報部は異様な雰囲気に包まれていたのだ。メインコントロールルームへ入室すると正にそこは戦場のような雰囲気を放っていた。いかに情報部といえ連休になるとスタッフも減り少し落ち着いた雰囲気になる。しかしこの日のメインコントロールルームには通常時よりもスタッフが多かったのだ。よく見るとヘッドフォンをし、ファンキーな格好をしている奴。ゴルフクラブを担いでいる奴。ギターケースを持っている奴。中にはひょっとこのお面を被っている奴もいた。なるほど、みんな休日を切り上げ急遽この情報部に舞い戻ってきたに違いない。やはり何か非常事態が起きたのだと川鍋は確信した。スタッフは入室してきた川鍋の方を見ると皆一礼した。別に驚いた表情はない、まるで川鍋が来たのが当たり前のような感じだった。
彼らはメインコントロールルームよりも更に奥に進んだ。もちろん奥に行けば奥に行くほどより機密性の高い部署になる。それだけ入室も制限されるのだが、このIDすら持たない黒尽くめ男達は何をする事もなくただ進むだけだった。ただそれだけでゲートが何も言わず勝手に開くのだ。ゲートにいるセキュリティスタッフも一切こちらを見る様子もなかった。そうまるで彼らが透明人間であるかのような、そしてゲートにも何も起きていないような正に異様な光景だった。しかし川鍋はそれら全てを理解しているようだった。
やがてあるゲートを越えると何もない閑散とした1本の通路にでた。すると身長180cmくらいの男が言った。
男1「我々の役目はここまでです。ここから先の侵入は我々も許可されていないので。」
その言葉に続いてもう片方の身長180cmくらいの男が言った。
男2「この先に何があるのか・・・あなたは分かっているかと思います。全てはこの先にあります。」
2人はそう言うと川鍋に一礼をしてその場を去った。長く続く通路。静まり返ったその空間には沈黙の中にも、重苦しい空気が流れていた。やがて川鍋はゆっくりと歩き始めた。その1歩1歩がやけに重かった。昔ある漫画で「究極の護身とは、危険が自分の身に及ぶ事を事前に察知し、それから回避する事だ」というような話を読んだ事がある。危機管理業務に携わっていた頃、幾多の修羅場を潜り抜けていた川鍋。とりわけ危機的状況に敏感になっていた。そんな川鍋の身体は明らかにこの先に行くのを拒否していた。しかしこの先に待ち受けているものに自ら身を投じる事が職務をまっとうする事であるという気持ちから彼はその重い足を前へ前へと進めていったのだ。
やがて大きな扉の前に辿りついた。この先にはある部屋がある。不思議な事に本来いるはずのセキュリティスタッフはこの扉の前にはいなかった。
「ふぅ〜っ」と川鍋は大きく息をついた。やがて全てを決心したかのように正面を見ると、扉に手を触れた。すると扉はゆっくりと開いたのである。扉は横開きにゆっくりと開いていった。その先には部屋があるようだったが暗くて何も見えなかった。川鍋は扉が開ききるまで待った。ほんの数秒がやけに長く感じる。扉は音もなく開いていったが、川鍋には重苦しい岩の扉がギシギシと音を立てて開いていくようにも思えた。やがて扉が開ききると、川鍋は再び「ふぅ〜っ」と息を付き先へと進んだ。中に踏み入れて彼は初めて気づいた。やけに大きなその空間は奥にある部屋の前室だったのだ。一体どれほどばかりにセキュリティが高いのであろうか。恐らくこの先には極めて高いレベルのスタッフしか足を踏み入れる事ができないのであろう。暗闇の中目の前に1本伸びる通路だけが、その先の扉へと伸びていた。ゆっくり、ゆっくりと先へと進む川鍋。ここへ来て彼は額や背中にじっとりと汗をかいているのを感じた。彼自身冷や汗などかくのはあの「2007Worksビッグバン」以来であった。あれから2年経ち格段にスキルのあがった彼が冷や汗をかく程のもの、それは想像を絶するものに違いないと彼は感じていた。
1歩1歩ゆっくりと、しかし確実に前へ進むとやがて目の前に壁が現れた。「行き止まりだろうか」彼は一瞬考えたが直ぐに目の前にあるキーボードをみつけた。それはちょうどパソコンの10キーと同じく10個の数字が並んだキーボードだった。彼はそのキーボードに手を伸ばすとなんの迷いも無く数字を打ち込んだのだ。彼自身無意識のうちにその番号を押したに違いない。危機管理エキスパートである彼の身体がその数字を押させたのだ。
やがてその壁は彼の目の前で真ん中に割れ、音も無くゆっくりと開いた。中から冷たく重苦しい空気が彼の身体にぶつかるように流れてくるのを彼は感じた。その威圧的な空気に圧倒され倒れそうになるのを必死でこらえながら彼は開き切るのを待っていた。
やがて壁は完全に開いた。しかしまたしても中は薄暗くうかがい知れる事はできなかった。「やはり、自らの足で進むしかない。」そう決心した彼は「ふう〜っ」っ大きく息をつくと中へと歩き出した。やがて彼の視界に飛び込んできたものは大きなスクリーンと円形のテーブルだった。彼は確信した。
「間違いない。ここは危機管理対策室だ。」
そう思った直後だった。彼は人の気配を感じた。良く見ると一番中央の奥に人が座っているのが見えた。いや、奥だけではない。テーブルを囲むように何人かの人間が座っていたのだ。彼が再び歩を進めようかとした瞬間、一番奥の男が声をあげた
「遅かったな・・・」
彼のその声に川鍋は驚き言葉を失った。
第6章〜長い夜の始まり〜
さて、少し時間を戻してみよう。Acoustic Cinema Art Works統括管理局広報部マルチメディア広報制作委員会ブログ制作室副室長、川鍋友義は管理業務を全て引き継ぎ、9月21日の23時30分頃ブログ制作室を後にした。本来なら数時間前には業務を引き継ぎ帰る予定だったのだが、なんとも言えない胸騒ぎがしてブログ制作室に残っていたのだ。彼はかつて執行部の危機管理室時代にあの「2007Worksビッグバン」を乗り越えた言わばネット業務危機管理のスペシャリストである。そんな彼の第6感は過去幾多の場面で危機を乗り越える大きな要因になっていた。しかし今回のは少し違った。いつもは考えるより先に行動を起こしていたのだが、今回に関しては自分でも不思議な感覚だった。それが一体何を表しているのかがずっと気になっていたのだ。色々と気になって何度確認してみても何も起こる気配もなく、全く異常はなかったのだ。結局現場のスタッフになだめられるように、ブログ管理室を後にしたのは23時30分を回った頃だった。
「最近は色々とあったからか少し疲れているのかもしれない。」
そう思いながら川鍋はブログ制作室を出て、メインのエントランスに繋がる廊下を歩いていた。だがそこでも何か不思議な感覚を覚えたのだ。立ち止り、しばらく廊下の先を見つめる川鍋。ここは自由通路となっており様々な部門の人間が往来する通路だった。と言ってもおりからの大型連休、そしてこの時間はほとんど人の往来はなかった。静かに廊下の先を見つめる川鍋。この先はゲートを抜けてエントランスになる。やがてゆっくりと歩き始める川鍋だったが、ふいに道をそれエントランスとは別方向の通路に入った。この通路は俗に「伏線」と呼ばれる通用口で統括管理局内至る所に張り巡らされている。部門から部門への移動、物資の移動や緊急時の避難に至るまで、一般通路を使用しないで迅速な移動をする為に設けられたものだが、その存在は管理官クラスにしか知られていない。と言うか恐らくその全てを知るものはいないのではないかとさえ言われているのだ。もちろんこの「伏線」にゲートは存在しない。一般的には知られていない何らかのセキュリティが働いているとされている。
川鍋は何を思ったのか中央ゲート前の「伏線」に入ると幾重にも入りくねった「伏線」を進んだ。やがて広い通路に出ると、そこはなんと運輸部の第1ターミナルだった。そう、あの「Acoustic Cinema Art Works Transport Service」のメイン搬入口だった。とは言え、大型連休のこの時間には物流の気配は無かった。しかし、メインエントランスの中央ゲートからこの第1ターミナルへは通常なら10分以上の移動時間がかかる。彼が「伏線」を使いかかった時間は僅か3分足らずだった。一体どのようなルートを辿ってきたのかは全く謎である。
彼は第1ターミナルの出口まで進むとある端末にIDを通した。実はAcoustic Cinema Art Worksの管理官クラスには「Acoustic Cinema Art Works Transport Service」を個人の移動手段として使用する権限が保障されているのだ。もちろんそれは明確な理由がある時のみに許される権利だが、大型連休の真っ只中、しかも深夜帯という事で充分使用できる理由はあったのだ。その端末は「Acoustic Cinema Art Works Transport Service」の使用許諾を申請する端末であった。本来人員の移動には第2ターミナル、いわゆる「旅客ターミナル」と呼ばれる場所を使うのだが、この時川鍋は物資専門の第1ターミナルから「Acoustic Cinema Art Works Transport Service」の使用許諾を取ったのだ。
彼の一連の行動、それはあたかも何かの裏をかいている行動のようにも思えた。
それからすぐ彼の目の前に1台の車がやってきた。白いセダン、一見して東京都の個人タクシーのように見えるその車。しかし屋根に付いている行灯には「TP」の2文字。間違いない「Acoustic Cinema Art Works Transport Service」の人員移動用の車両だ。車は第1ターミナルメインロータリーの駐停車帯に止まると中から1人の男が出てきた。彼もまた一見してタクシーの運転手のような風貌だった。しかし彼のかぶる帽子には「TP」の2文字。彼の付けている腕章にも「TP」の2文字。彼の付けるIDにももちろん「TP」の2文字。彼の付けているバッジはなぜか「20世紀少年」のバッジ。きっと映画を見に行ったに違いない。
川鍋は車の方へ行くと車の運転手にIDを見せながら言った。
川鍋「統括管理局広報部マルティメディア広報制作委員会ブログ制作室副室長の川鍋です。服務規程に基づきAcoustic Cinema Art Works Transport Serviceの使用を申請しました。」
すると運転手は言った。
運転手「お疲れ様です。川鍋副室長ですね。先程TP使用の申請を確認しました。あなたにはTPの使用が許可されます。」
それを聞くと川鍋は持っていた荷物をトランクへと押し込んだ。トランクの扉を閉め車に乗ろうと後部座席のドアの前に立った。しかし運転手は後部座席のドアを開けようとしなかった。自分で開けようとしたがロックされていて開ける事ができなかった。
川鍋「あの、ドアを開けて頂けませんか?」
川鍋は運転手に言ったが、運転手は何も答えないまま運転席に座ろうとした。
川鍋「おい!一体どうなっているんだ!!」
声を荒らげる川鍋。すると運転手は静かに口を開いた。
運転手「ご安心下さい。あなたの荷物は責任をもってお預かりいたします。全てが終わったらまたお届けにあがります。」
川鍋「一体何を!何を言っているんだ!?」
運転手「確かに、あなたにはTPの使用が許可されております。でも・・・今回は使う事ができないのです。」
運転手がそう言った直後だった。川鍋のもとに黒いスーツを着てサングラスをかけた2人組みの男達がやってきた。IDの着用が義務とされているAcoustic Cinema Art Works内で
彼らはIDをつけていなかった。しかし川鍋は彼らが一体何者なのか知っていた。
彼らは川鍋の前に立つと運転手の方を見て合図を送った。それを見た運転手は車を走らせた。一連の行動に川鍋は口を挟むことはなかった。やがて身長180cmくらいの方の男がこう言った。
男1「川鍋・・・管理官ですね?我々がここへ来たという事はある程度事態の方は察しがつくかと思います。一緒に来て頂けますね?」
川鍋は険しい表情を浮かべながらも何も言わずゆっくり歩き始めた。彼らの間を通り抜けようとする川鍋。しかし一瞬立ち止り先程の顔を見た。すると男は胸元にある何かに手をかけたが、川鍋がまた歩き出すと我に返り川鍋の後に続いて歩き始めた。それを見たもう片方の、身長180cmくらいの男は川鍋を誘導するため彼の前に出て歩き始めた。一瞬見たもう片方の男は冷や汗をかいていた。彼が冷や汗をかいたのは後にも先にもこの時だけだったという。後に彼はその時の川鍋の表情をこう語った。
「鬼だ。正しく鬼だった。あの日あの場所に・・・信じられるか?鬼がいたんだよ・・・。」
誰もいなくなった第1ターミナルに再び静けさが舞い戻る。時刻は間もなく深夜0時になろうかという頃だった・・・。
「最近は色々とあったからか少し疲れているのかもしれない。」
そう思いながら川鍋はブログ制作室を出て、メインのエントランスに繋がる廊下を歩いていた。だがそこでも何か不思議な感覚を覚えたのだ。立ち止り、しばらく廊下の先を見つめる川鍋。ここは自由通路となっており様々な部門の人間が往来する通路だった。と言ってもおりからの大型連休、そしてこの時間はほとんど人の往来はなかった。静かに廊下の先を見つめる川鍋。この先はゲートを抜けてエントランスになる。やがてゆっくりと歩き始める川鍋だったが、ふいに道をそれエントランスとは別方向の通路に入った。この通路は俗に「伏線」と呼ばれる通用口で統括管理局内至る所に張り巡らされている。部門から部門への移動、物資の移動や緊急時の避難に至るまで、一般通路を使用しないで迅速な移動をする為に設けられたものだが、その存在は管理官クラスにしか知られていない。と言うか恐らくその全てを知るものはいないのではないかとさえ言われているのだ。もちろんこの「伏線」にゲートは存在しない。一般的には知られていない何らかのセキュリティが働いているとされている。
川鍋は何を思ったのか中央ゲート前の「伏線」に入ると幾重にも入りくねった「伏線」を進んだ。やがて広い通路に出ると、そこはなんと運輸部の第1ターミナルだった。そう、あの「Acoustic Cinema Art Works Transport Service」のメイン搬入口だった。とは言え、大型連休のこの時間には物流の気配は無かった。しかし、メインエントランスの中央ゲートからこの第1ターミナルへは通常なら10分以上の移動時間がかかる。彼が「伏線」を使いかかった時間は僅か3分足らずだった。一体どのようなルートを辿ってきたのかは全く謎である。
彼は第1ターミナルの出口まで進むとある端末にIDを通した。実はAcoustic Cinema Art Worksの管理官クラスには「Acoustic Cinema Art Works Transport Service」を個人の移動手段として使用する権限が保障されているのだ。もちろんそれは明確な理由がある時のみに許される権利だが、大型連休の真っ只中、しかも深夜帯という事で充分使用できる理由はあったのだ。その端末は「Acoustic Cinema Art Works Transport Service」の使用許諾を申請する端末であった。本来人員の移動には第2ターミナル、いわゆる「旅客ターミナル」と呼ばれる場所を使うのだが、この時川鍋は物資専門の第1ターミナルから「Acoustic Cinema Art Works Transport Service」の使用許諾を取ったのだ。
彼の一連の行動、それはあたかも何かの裏をかいている行動のようにも思えた。
それからすぐ彼の目の前に1台の車がやってきた。白いセダン、一見して東京都の個人タクシーのように見えるその車。しかし屋根に付いている行灯には「TP」の2文字。間違いない「Acoustic Cinema Art Works Transport Service」の人員移動用の車両だ。車は第1ターミナルメインロータリーの駐停車帯に止まると中から1人の男が出てきた。彼もまた一見してタクシーの運転手のような風貌だった。しかし彼のかぶる帽子には「TP」の2文字。彼の付けている腕章にも「TP」の2文字。彼の付けるIDにももちろん「TP」の2文字。彼の付けているバッジはなぜか「20世紀少年」のバッジ。きっと映画を見に行ったに違いない。
川鍋は車の方へ行くと車の運転手にIDを見せながら言った。
川鍋「統括管理局広報部マルティメディア広報制作委員会ブログ制作室副室長の川鍋です。服務規程に基づきAcoustic Cinema Art Works Transport Serviceの使用を申請しました。」
すると運転手は言った。
運転手「お疲れ様です。川鍋副室長ですね。先程TP使用の申請を確認しました。あなたにはTPの使用が許可されます。」
それを聞くと川鍋は持っていた荷物をトランクへと押し込んだ。トランクの扉を閉め車に乗ろうと後部座席のドアの前に立った。しかし運転手は後部座席のドアを開けようとしなかった。自分で開けようとしたがロックされていて開ける事ができなかった。
川鍋「あの、ドアを開けて頂けませんか?」
川鍋は運転手に言ったが、運転手は何も答えないまま運転席に座ろうとした。
川鍋「おい!一体どうなっているんだ!!」
声を荒らげる川鍋。すると運転手は静かに口を開いた。
運転手「ご安心下さい。あなたの荷物は責任をもってお預かりいたします。全てが終わったらまたお届けにあがります。」
川鍋「一体何を!何を言っているんだ!?」
運転手「確かに、あなたにはTPの使用が許可されております。でも・・・今回は使う事ができないのです。」
運転手がそう言った直後だった。川鍋のもとに黒いスーツを着てサングラスをかけた2人組みの男達がやってきた。IDの着用が義務とされているAcoustic Cinema Art Works内で
彼らはIDをつけていなかった。しかし川鍋は彼らが一体何者なのか知っていた。
彼らは川鍋の前に立つと運転手の方を見て合図を送った。それを見た運転手は車を走らせた。一連の行動に川鍋は口を挟むことはなかった。やがて身長180cmくらいの方の男がこう言った。
男1「川鍋・・・管理官ですね?我々がここへ来たという事はある程度事態の方は察しがつくかと思います。一緒に来て頂けますね?」
川鍋は険しい表情を浮かべながらも何も言わずゆっくり歩き始めた。彼らの間を通り抜けようとする川鍋。しかし一瞬立ち止り先程の顔を見た。すると男は胸元にある何かに手をかけたが、川鍋がまた歩き出すと我に返り川鍋の後に続いて歩き始めた。それを見たもう片方の、身長180cmくらいの男は川鍋を誘導するため彼の前に出て歩き始めた。一瞬見たもう片方の男は冷や汗をかいていた。彼が冷や汗をかいたのは後にも先にもこの時だけだったという。後に彼はその時の川鍋の表情をこう語った。
「鬼だ。正しく鬼だった。あの日あの場所に・・・信じられるか?鬼がいたんだよ・・・。」
誰もいなくなった第1ターミナルに再び静けさが舞い戻る。時刻は間もなく深夜0時になろうかという頃だった・・・。
第5章〜あの巨大な力〜
最高執行部から情報部を通じて緊急行動通達が発令されて以来、依然として新しい情報は何1つとしてなかった。日付も変わり時間が進むにつれ情報は非常に錯綜していた。
「今回の『ブログ閉鎖』にはフェニックス計画推進室が関与している。」
「もともと東京練馬スタジオのブログは閉鎖状態にあり実は統括管理局の管理下に置かれていた。」
など、様々な憶測が飛び交った。果ては
「宇宙人の仕業である。」
「未来からの警告である。」
「ノストラダムスはこの出来事を予言していた。」
「枕カバーとトランクスの柄は似ているかもしれない。」
など、突拍子も無い情報も飛び込んできていた。そういった情報を受け、前田は非常にもどかしい思いをしていた。
前田「一体なんだこの情報は?全然関係ねぇじゃん。」
小塩「えぇ、全くその通りです。しかしこうまで情報が錯綜しているとなると、これはやはり・・・」
前田「情報が操作されているな。」
前田の言葉に小塩の表情は険しくなった。
小塩「やはりそう思いますか。しかしなんだって情報操作が必要なんだ?一体今回の練馬スタジオのブログ閉鎖に何が隠されているんだ?」
小塩の言葉にしばらく沈黙をしていた前田だったが、静かに口を開いた
前田「もしかしたら、何らかの『大きな力』が働いているのかもしれないな」
小塩「『大きな力』!?」
小塩は驚きながら言った。
小塩「いやしかし、あれは全くの噂話で実体のないものだと聞いております。私も情報部時代に何度か耳にしておりますけど、『あんなものは茶番だ』と誰もが口を揃えて言ってましたよ。いつだったかの公式発表でも“いわゆる『大きな力』は全くのでっち上げで、その様なものの存在は一切無い。“って言っていましたよね。」
前田「確かに。最初『大きな力』が噂され始めたのは確か2006年の夏ごろだったと思う。それから事ある度に、特に8月中頃になるとよく噂されていたものだ。当時調査部は調査委員会を立ち上げその『大きな力』の存在を調査したが、結局のところ最高執行部がその存在を否定し、結果そのようなものは全く存在しないという結論に至った。『大きな力』とは緊急事態を速やかに処理する為の上層部のうわ言だという話になったんだ。」
小塩「下士官の間でも、いわゆる『都市伝説』みたいなもんだって、もはや笑い話になっていましたよ。」
前田「ところが、当時この調査委員会の立ち上げに最後まで反対したある部署があったという・・・。」
小塩「えっ!そんなの初耳ですよ!一体どこなんです?」
前田「それは、とう・・・
「前田補佐官!!」
前田の話を遮る様にあるスタッフが前田に声をかけた。
スタッフ「前田補佐官、たった今情報部の対策本部に危機管理担当官が着任したとの情報が入りました。」
前田「・・・今は現実に起きている事の方が大切だな。」
前田は小塩の方を見て言った。
前田「それで、危機管理官に着任したのは誰です?」
前田のその質問にスタッフは表情を険しくした。そして生唾を飲み、ゆっくりと口を開いた。彼の口から発せられたその言葉に、ブログ制作室内は静まりかえった。
スタッフ「危機管理間に着任したのは、川・・・間違いない、川鍋友義危機管理官です。」
静寂が包むブログ制作室。やがてスタッフ全員が口々に驚きを表した。
小塩「川鍋副室長が?バカ言え、川鍋副室長は我々ブログ制作室の危機管理担当官だぞ。なんで川鍋副室長が調査部に行くんです?前田補佐官。」
前田も動揺していた。
前田「分からない。今回の件に関しては何1つ分からない。ただ言える事は川鍋さんはネット危機管理のスペシャリストなんだ。その川鍋さんが向こうに着任したとなると、今回のこの件は単純に練馬スタジオがブログを閉鎖した事実だけではなく、もっと大きな何かが動いているのかもしれない。」
小塩「先程の『大きな力』ですか?」
スタッフ「え?『大きな力』ってなんです?」
小塩「君には関係ない話だ!早く自分の持ち場に戻って作業を続けなさい!!」
小塩は声を荒らげた。
前田「落ち着きましょう。こういう時は混乱するのが最も命取りになるんだ。落ち着いてまずは現状を見直しましょう。」
前田は小塩をなだめるように言った。
前田「とりあえず、なんとか川鍋副室長とコンタクトを試みましょう。幸いネットシステムは健全な状態にある。部内のネットワークを使ってなんとかコンタクトを。未だ我々は何の情報も得ていないんだ。まずは情報収集に専念しましょう。それから、5分後に代表者を集めてミーティングを行います。」
池波「え?代表者って言っても3人しか・・・」
前田「そうだった。じゃあやめよう。」
小塩「補佐官、落ち着いて下さい。」
前田「あぁ、申し訳ない。よし、各チーム全力で取り組もう。」
前田の言葉に各スタッフは再び自分の持ち場で作業を始めた。
「ふぅ〜っ」
前田は深くため息をついた。しばらく考えるようにメインモニタを見つめる前田。やがて石森の方に目をやる。石森もまた前田を見た。そして前田は何やら石森に合図を送る。すると石森は軽くうなずき、やがて静かにブログ制作室を出て行った。
時刻は間もなく深夜2時を回ろうとしていた・・・
「今回の『ブログ閉鎖』にはフェニックス計画推進室が関与している。」
「もともと東京練馬スタジオのブログは閉鎖状態にあり実は統括管理局の管理下に置かれていた。」
など、様々な憶測が飛び交った。果ては
「宇宙人の仕業である。」
「未来からの警告である。」
「ノストラダムスはこの出来事を予言していた。」
「枕カバーとトランクスの柄は似ているかもしれない。」
など、突拍子も無い情報も飛び込んできていた。そういった情報を受け、前田は非常にもどかしい思いをしていた。
前田「一体なんだこの情報は?全然関係ねぇじゃん。」
小塩「えぇ、全くその通りです。しかしこうまで情報が錯綜しているとなると、これはやはり・・・」
前田「情報が操作されているな。」
前田の言葉に小塩の表情は険しくなった。
小塩「やはりそう思いますか。しかしなんだって情報操作が必要なんだ?一体今回の練馬スタジオのブログ閉鎖に何が隠されているんだ?」
小塩の言葉にしばらく沈黙をしていた前田だったが、静かに口を開いた
前田「もしかしたら、何らかの『大きな力』が働いているのかもしれないな」
小塩「『大きな力』!?」
小塩は驚きながら言った。
小塩「いやしかし、あれは全くの噂話で実体のないものだと聞いております。私も情報部時代に何度か耳にしておりますけど、『あんなものは茶番だ』と誰もが口を揃えて言ってましたよ。いつだったかの公式発表でも“いわゆる『大きな力』は全くのでっち上げで、その様なものの存在は一切無い。“って言っていましたよね。」
前田「確かに。最初『大きな力』が噂され始めたのは確か2006年の夏ごろだったと思う。それから事ある度に、特に8月中頃になるとよく噂されていたものだ。当時調査部は調査委員会を立ち上げその『大きな力』の存在を調査したが、結局のところ最高執行部がその存在を否定し、結果そのようなものは全く存在しないという結論に至った。『大きな力』とは緊急事態を速やかに処理する為の上層部のうわ言だという話になったんだ。」
小塩「下士官の間でも、いわゆる『都市伝説』みたいなもんだって、もはや笑い話になっていましたよ。」
前田「ところが、当時この調査委員会の立ち上げに最後まで反対したある部署があったという・・・。」
小塩「えっ!そんなの初耳ですよ!一体どこなんです?」
前田「それは、とう・・・
「前田補佐官!!」
前田の話を遮る様にあるスタッフが前田に声をかけた。
スタッフ「前田補佐官、たった今情報部の対策本部に危機管理担当官が着任したとの情報が入りました。」
前田「・・・今は現実に起きている事の方が大切だな。」
前田は小塩の方を見て言った。
前田「それで、危機管理官に着任したのは誰です?」
前田のその質問にスタッフは表情を険しくした。そして生唾を飲み、ゆっくりと口を開いた。彼の口から発せられたその言葉に、ブログ制作室内は静まりかえった。
スタッフ「危機管理間に着任したのは、川・・・間違いない、川鍋友義危機管理官です。」
静寂が包むブログ制作室。やがてスタッフ全員が口々に驚きを表した。
小塩「川鍋副室長が?バカ言え、川鍋副室長は我々ブログ制作室の危機管理担当官だぞ。なんで川鍋副室長が調査部に行くんです?前田補佐官。」
前田も動揺していた。
前田「分からない。今回の件に関しては何1つ分からない。ただ言える事は川鍋さんはネット危機管理のスペシャリストなんだ。その川鍋さんが向こうに着任したとなると、今回のこの件は単純に練馬スタジオがブログを閉鎖した事実だけではなく、もっと大きな何かが動いているのかもしれない。」
小塩「先程の『大きな力』ですか?」
スタッフ「え?『大きな力』ってなんです?」
小塩「君には関係ない話だ!早く自分の持ち場に戻って作業を続けなさい!!」
小塩は声を荒らげた。
前田「落ち着きましょう。こういう時は混乱するのが最も命取りになるんだ。落ち着いてまずは現状を見直しましょう。」
前田は小塩をなだめるように言った。
前田「とりあえず、なんとか川鍋副室長とコンタクトを試みましょう。幸いネットシステムは健全な状態にある。部内のネットワークを使ってなんとかコンタクトを。未だ我々は何の情報も得ていないんだ。まずは情報収集に専念しましょう。それから、5分後に代表者を集めてミーティングを行います。」
池波「え?代表者って言っても3人しか・・・」
前田「そうだった。じゃあやめよう。」
小塩「補佐官、落ち着いて下さい。」
前田「あぁ、申し訳ない。よし、各チーム全力で取り組もう。」
前田の言葉に各スタッフは再び自分の持ち場で作業を始めた。
「ふぅ〜っ」
前田は深くため息をついた。しばらく考えるようにメインモニタを見つめる前田。やがて石森の方に目をやる。石森もまた前田を見た。そして前田は何やら石森に合図を送る。すると石森は軽くうなずき、やがて静かにブログ制作室を出て行った。
時刻は間もなく深夜2時を回ろうとしていた・・・
第4章〜緊急会議〜
2009年9月21日深夜、ブログ制作室に突如最高執行部から緊急行動通達が入電、その内容はあの東京練馬スタジオが突然ブログの閉鎖を発表したというものだった。おりしも大型連休の真っ只中で限られたスタッフの中現場の総責任者を任された前田補佐官はブログ制作室内にレベル2の警戒態勢を発令、情報の収集に専念するよう指示した。
それから間もなくしてミーティングルームで各チームの代表者を集めて会議を行う事にした。
ミーティングルームに入った前田は驚いた。そこにはだだっ広い部屋に僅か3人しかいなかったのだ。
前田「え?これだけ?」
前田は思わず言った。
「何分、連休中ですから・・・。」
そう言ったのは先程メインモニタで前田にブログ制作室の状況を説明していたシステム技術士官の池波勝久である。通称「Dr.K」と呼ばれている。
池波の隣にいるのは元情報部の技術士官で、現在はブログ管理室で情報管理を任されている“頼れる兄貴”小塩則之。
そして2人の対面に座っているのが通称「よろず屋」と呼ばれ消耗品の管理からブログ制作室の温度管理まで、様々なところに気をくばる事務官、石森司であった。
通常各チームの代表者会議は7、8名で行われる。全部所の代表者を集めると12名になり俗に「マジェスティック12」と呼ばれている。しかし連休中で現在ブログ制作室に残っている「代表者」と呼べる人間は前田を含めて4名しかいなかった。
前田「これだけか・・・まぁしかたないか。」
そう言って椅子に座ろうとした時
コンコン!「失礼します」
と言って1人のスタッフがミーティングルームにコーヒーを運んできた。
石森「ま、とりあえずコーヒーでも飲んで落ち着きましょうや。人員も少ないんだ、この後はいつも以上に気を引きしめんといけませんから。」
さすがは「よろず屋」と呼ばれる石森、今日も隅々まで気が利いている。前田はブラック。池波は砂糖不要でミルクを2つ。小塩はネコ舌なので少し温めでミルクと砂糖を1つずつ。正に完璧であった。そういえばミーティングルームも快適な温度になっている。有事の際にも自らの仕事を徹底して行う、マエストロ石森の手腕がいかんなく発揮されていた。
コーヒーを一口飲むと前田は言った。
前田「とりあえず、各チームの現在の状況から報告して下さい。」
前田のその言葉に、まずはシステム担当の池波が報告を始めた
池波「現在のところ我々ブログ制作室のシステムに問題はありません。先程システム情報部を通じて全部門に確認をしたのですが統括管理局のネット業務に問題は発生しておりません。従って今回のブログ閉鎖が外部からの何らかの攻撃、いわゆる『サイバーテロ』である可能性は極めて低いと思われます。」
前田「・・・良かった。」
池波「はい。ただまだ現段階ではなんとも言えないので引き続きシステムは警戒態勢をレベル2に設定して管理を続けたいと思います。」
前田「分かりました。引き続き慎重に対応をお願いします。」
池波「了解しました。」
続いて情報管理士官の小塩が報告をした。
小塩「現在のところ情報部が情報収集しているものと思われますが、まだ何一つ情報がおりてきていないので情報部も非常に困難を極めているものと思われます。今回の『ブログ閉鎖』に関しては東京練馬スタジオが自らその発表を行ったとされておりますが、その理由などは一切発表されておらず情報は錯綜しております。既に情報部の方から何名かのエージェントが東京練馬スタジオに派遣されたようですが、我々の方でも1名東京練馬スタジオにスタッフを送り込みました。」
前田「おぉ、連休中なのに誰か行く奴がいたんですか?」
小塩「えぇたまたま東京にいる奴と連絡が取れましてね。彼も非常に慌てた様子でしたが、直ぐにでも向かうとの事でした。」
前田「素晴らしい。引き続き調査を行って下さい。」
小塩「分かりました。」
最後に石森が報告を行う
石森「えー、現在A4の用紙が品薄という事でしたが、連休中で仕入先の業者も休みとなっておりますので、入荷は連休明けとなります。在庫率が10%以下になり次第他の部門から手配する予定になっております。連休前に各班より発注された事務用品に関しては既に入荷済みなので随時支給しております。連休中はゴミの定時回収のローテーションが変更となっておりますので既に各班に配布済みのローテーション表を参照して下さい。メインフロアをはじめ各部署、現在のところ適温に設定されております。」
前田「・・・わ、分かりました。あの・・・引き続きお願いします。」
他の2人とは少し違う内容の報告に少々困惑しながらも前田は言った。
少し沈黙が続いたが、やがて小塩がおもむろに口を開いた。
小塩「あー・・・そう言えば情報部には対策本部が設置され危機管理室が設けられたみたいですよ。」
前田「何!?じゃあ・・・」
小塩「えぇ、たぶん上の危機管理担当官が情報部に行くのではないでしょうか。」
前田「ちょっと待って。って事はじゃあ・・・」
小塩「えぇ。前田補佐官が1番良くご存知かと思いますけど、我が部署にもEAMが発令された事を考えると危機管理官の着任が予想されます。」
前田「そうか・・・できれば我々のところはあまりコントロールされたくないんだが・・・。」
小塩「それでなんですけど・・・」
小塩は前田の顔色を伺うように話した。
小塩「ここはやはり川鍋副室長を呼ぶべきではないでしょうか?いくら休暇中とは言えEAMが発令されているんです。川鍋副室長を呼ぶには充分すぎる理由じゃないですか?川鍋さんは危機管理の権限を持っているんです。川鍋副室長が危機管理官に着任すればオカミの管理官も介入しないでしょう。」
小塩の言葉に前田は少し考えながらゆっくりと答えた。
前田「んーまぁそれが本来なら1番正しいのかもしれない。確かに執行部の管理官が介入するよりは川鍋副室長にコントロールしてもらうのが1番だ。ただ今はまだ情報が錯綜している状態なんだ。一応服務規程には『EAM発令時には上級士官の在任を義務とする』とある。つまり今の段階では私じゃなく、ましてや川鍋副室長ではなくあなた方でも指揮ができる状態なんだ。我々もいつまでも川鍋副室長にばかり頼っていられない。EAMに関しては既に室長、副室長にも連絡が入っているはずだ。現段階で両人から連絡が無いのは、おそらく調査部の方から何らかの情報が随時入っているって事だろう?」
小塩「えっ!?現場にいる我々のところには一切情報は降りてきていないんですよ?」
前田「まぁそりゃ指揮官クラスになれば色々とあるさ・・・。とにかく今は我々ができる最善の事を全力でやるんだ。」
小塩「・・・分かりました。とりあえずやりましょう。」
それぞれ決意を新に全力で調査を進める事を確認し最初のミーティングは終了した。部屋を後にする3人。すると
前田「あ、石森さん!」
部屋を出ようとした石森を前田は呼び止め、彼に何かを渡した。それを見た石森は驚いた表情を浮かべた。彼の驚いた表情を見て前田は静かに言った。
前田「これは情報部のマスターIDです・・・
それから間もなくしてミーティングルームで各チームの代表者を集めて会議を行う事にした。
ミーティングルームに入った前田は驚いた。そこにはだだっ広い部屋に僅か3人しかいなかったのだ。
前田「え?これだけ?」
前田は思わず言った。
「何分、連休中ですから・・・。」
そう言ったのは先程メインモニタで前田にブログ制作室の状況を説明していたシステム技術士官の池波勝久である。通称「Dr.K」と呼ばれている。
池波の隣にいるのは元情報部の技術士官で、現在はブログ管理室で情報管理を任されている“頼れる兄貴”小塩則之。
そして2人の対面に座っているのが通称「よろず屋」と呼ばれ消耗品の管理からブログ制作室の温度管理まで、様々なところに気をくばる事務官、石森司であった。
通常各チームの代表者会議は7、8名で行われる。全部所の代表者を集めると12名になり俗に「マジェスティック12」と呼ばれている。しかし連休中で現在ブログ制作室に残っている「代表者」と呼べる人間は前田を含めて4名しかいなかった。
前田「これだけか・・・まぁしかたないか。」
そう言って椅子に座ろうとした時
コンコン!「失礼します」
と言って1人のスタッフがミーティングルームにコーヒーを運んできた。
石森「ま、とりあえずコーヒーでも飲んで落ち着きましょうや。人員も少ないんだ、この後はいつも以上に気を引きしめんといけませんから。」
さすがは「よろず屋」と呼ばれる石森、今日も隅々まで気が利いている。前田はブラック。池波は砂糖不要でミルクを2つ。小塩はネコ舌なので少し温めでミルクと砂糖を1つずつ。正に完璧であった。そういえばミーティングルームも快適な温度になっている。有事の際にも自らの仕事を徹底して行う、マエストロ石森の手腕がいかんなく発揮されていた。
コーヒーを一口飲むと前田は言った。
前田「とりあえず、各チームの現在の状況から報告して下さい。」
前田のその言葉に、まずはシステム担当の池波が報告を始めた
池波「現在のところ我々ブログ制作室のシステムに問題はありません。先程システム情報部を通じて全部門に確認をしたのですが統括管理局のネット業務に問題は発生しておりません。従って今回のブログ閉鎖が外部からの何らかの攻撃、いわゆる『サイバーテロ』である可能性は極めて低いと思われます。」
前田「・・・良かった。」
池波「はい。ただまだ現段階ではなんとも言えないので引き続きシステムは警戒態勢をレベル2に設定して管理を続けたいと思います。」
前田「分かりました。引き続き慎重に対応をお願いします。」
池波「了解しました。」
続いて情報管理士官の小塩が報告をした。
小塩「現在のところ情報部が情報収集しているものと思われますが、まだ何一つ情報がおりてきていないので情報部も非常に困難を極めているものと思われます。今回の『ブログ閉鎖』に関しては東京練馬スタジオが自らその発表を行ったとされておりますが、その理由などは一切発表されておらず情報は錯綜しております。既に情報部の方から何名かのエージェントが東京練馬スタジオに派遣されたようですが、我々の方でも1名東京練馬スタジオにスタッフを送り込みました。」
前田「おぉ、連休中なのに誰か行く奴がいたんですか?」
小塩「えぇたまたま東京にいる奴と連絡が取れましてね。彼も非常に慌てた様子でしたが、直ぐにでも向かうとの事でした。」
前田「素晴らしい。引き続き調査を行って下さい。」
小塩「分かりました。」
最後に石森が報告を行う
石森「えー、現在A4の用紙が品薄という事でしたが、連休中で仕入先の業者も休みとなっておりますので、入荷は連休明けとなります。在庫率が10%以下になり次第他の部門から手配する予定になっております。連休前に各班より発注された事務用品に関しては既に入荷済みなので随時支給しております。連休中はゴミの定時回収のローテーションが変更となっておりますので既に各班に配布済みのローテーション表を参照して下さい。メインフロアをはじめ各部署、現在のところ適温に設定されております。」
前田「・・・わ、分かりました。あの・・・引き続きお願いします。」
他の2人とは少し違う内容の報告に少々困惑しながらも前田は言った。
少し沈黙が続いたが、やがて小塩がおもむろに口を開いた。
小塩「あー・・・そう言えば情報部には対策本部が設置され危機管理室が設けられたみたいですよ。」
前田「何!?じゃあ・・・」
小塩「えぇ、たぶん上の危機管理担当官が情報部に行くのではないでしょうか。」
前田「ちょっと待って。って事はじゃあ・・・」
小塩「えぇ。前田補佐官が1番良くご存知かと思いますけど、我が部署にもEAMが発令された事を考えると危機管理官の着任が予想されます。」
前田「そうか・・・できれば我々のところはあまりコントロールされたくないんだが・・・。」
小塩「それでなんですけど・・・」
小塩は前田の顔色を伺うように話した。
小塩「ここはやはり川鍋副室長を呼ぶべきではないでしょうか?いくら休暇中とは言えEAMが発令されているんです。川鍋副室長を呼ぶには充分すぎる理由じゃないですか?川鍋さんは危機管理の権限を持っているんです。川鍋副室長が危機管理官に着任すればオカミの管理官も介入しないでしょう。」
小塩の言葉に前田は少し考えながらゆっくりと答えた。
前田「んーまぁそれが本来なら1番正しいのかもしれない。確かに執行部の管理官が介入するよりは川鍋副室長にコントロールしてもらうのが1番だ。ただ今はまだ情報が錯綜している状態なんだ。一応服務規程には『EAM発令時には上級士官の在任を義務とする』とある。つまり今の段階では私じゃなく、ましてや川鍋副室長ではなくあなた方でも指揮ができる状態なんだ。我々もいつまでも川鍋副室長にばかり頼っていられない。EAMに関しては既に室長、副室長にも連絡が入っているはずだ。現段階で両人から連絡が無いのは、おそらく調査部の方から何らかの情報が随時入っているって事だろう?」
小塩「えっ!?現場にいる我々のところには一切情報は降りてきていないんですよ?」
前田「まぁそりゃ指揮官クラスになれば色々とあるさ・・・。とにかく今は我々ができる最善の事を全力でやるんだ。」
小塩「・・・分かりました。とりあえずやりましょう。」
それぞれ決意を新に全力で調査を進める事を確認し最初のミーティングは終了した。部屋を後にする3人。すると
前田「あ、石森さん!」
部屋を出ようとした石森を前田は呼び止め、彼に何かを渡した。それを見た石森は驚いた表情を浮かべた。彼の驚いた表情を見て前田は静かに言った。
前田「これは情報部のマスターIDです・・・
第3章〜緊急行動通達入電〜
2009年9月22日深夜、日付が変わってからしばらくして、Acoustic Cinema Art Works統括管理局広報部ブログ制作室内に突如緊急行動通達の入電を知らせるアラームが鳴り響いた。突然の出来事にブログ制作室騒然となった
スタッフ「前田補佐官、執行部から緊急行動通達が入電しました。」
前田「EAM?なんだってこんな時間にEAMが・・・とにかく照会をして下さい。」
スタッフ「分かりました。」
緊急行動通達、通称「EAM」と呼ばれるこの通達は緊急時に最高執行部が各部門をコントロール下に置く為に発信する通達で、各部門は緊急行動通達発信時には警戒態勢に入り、その通達の指示に従う事になるのだ。
スタッフ「前田補佐官、EAMの照会が完了しました。最高執行部からの正規の緊急行動通達である事を確認しました。」
前田「分かりました。情報をメインモニタに出して下さい。」
するとスタッフは緊急行動通達の内容をメインモニタに出した。表示された緊急行動通達の内容に制作室内は再び騒然となった。
緊急行動通達
2009年9月21日、東京練馬スタジオが突如ブログの閉鎖を発表。詳細は現在情報部が確認中。各関係機関は警戒態勢に入り今後の情報に注意して下さい。
スタッフ「ま・・・前田補佐官、これって・・・。」
前田「あぁ、もし本当の事なら大変な事が起きたな。ともかく、まだ詳しい情報は未確認のままだ。まずは情報の収集に専念しよう。」
スタッフ「分かりました。」
前田「何分スタッフが少ない。こういう時はしっかりとした統制を組まないと。」
そう言うと前田は館内放送のマイクを手に取った。
前田「全スタッフに連絡です。既にお分かりの通り、先程最高執行部から緊急行動通達が入電し東京練馬スタジオがブログを閉鎖するという発表を行ったとの情報が入りました。現在のところ情報は錯綜しているようです。ブログ業務は我々に最も関係するところ、万が一の事も考え現在警戒態勢をレベル2に設定します。各所連携を取って情報の収集に専念して下さい。それから5分後に会議を行います。今いる各チームの代表者はミーティングルームに集まって下さい。」
前田の言葉にブログ制作室のスタッフは慌しく動き始めた。するとあるスタッフが前田に声をかけた
スタッフ「前田さん、川鍋副室長・・・呼びますか?」
前田は即座に答えた
前田「いや、副室長はお休みだ。仮に呼ぶにしても今の段階ではまだ早すぎる。まずは我々で情報を収集しよう。」
スタッフ「分かりました。」
時刻は間もなく午前1時を迎えようとしていた・・・
スタッフ「前田補佐官、執行部から緊急行動通達が入電しました。」
前田「EAM?なんだってこんな時間にEAMが・・・とにかく照会をして下さい。」
スタッフ「分かりました。」
緊急行動通達、通称「EAM」と呼ばれるこの通達は緊急時に最高執行部が各部門をコントロール下に置く為に発信する通達で、各部門は緊急行動通達発信時には警戒態勢に入り、その通達の指示に従う事になるのだ。
スタッフ「前田補佐官、EAMの照会が完了しました。最高執行部からの正規の緊急行動通達である事を確認しました。」
前田「分かりました。情報をメインモニタに出して下さい。」
するとスタッフは緊急行動通達の内容をメインモニタに出した。表示された緊急行動通達の内容に制作室内は再び騒然となった。
緊急行動通達
2009年9月21日、東京練馬スタジオが突如ブログの閉鎖を発表。詳細は現在情報部が確認中。各関係機関は警戒態勢に入り今後の情報に注意して下さい。
スタッフ「ま・・・前田補佐官、これって・・・。」
前田「あぁ、もし本当の事なら大変な事が起きたな。ともかく、まだ詳しい情報は未確認のままだ。まずは情報の収集に専念しよう。」
スタッフ「分かりました。」
前田「何分スタッフが少ない。こういう時はしっかりとした統制を組まないと。」
そう言うと前田は館内放送のマイクを手に取った。
前田「全スタッフに連絡です。既にお分かりの通り、先程最高執行部から緊急行動通達が入電し東京練馬スタジオがブログを閉鎖するという発表を行ったとの情報が入りました。現在のところ情報は錯綜しているようです。ブログ業務は我々に最も関係するところ、万が一の事も考え現在警戒態勢をレベル2に設定します。各所連携を取って情報の収集に専念して下さい。それから5分後に会議を行います。今いる各チームの代表者はミーティングルームに集まって下さい。」
前田の言葉にブログ制作室のスタッフは慌しく動き始めた。するとあるスタッフが前田に声をかけた
スタッフ「前田さん、川鍋副室長・・・呼びますか?」
前田は即座に答えた
前田「いや、副室長はお休みだ。仮に呼ぶにしても今の段階ではまだ早すぎる。まずは我々で情報を収集しよう。」
スタッフ「分かりました。」
時刻は間もなく午前1時を迎えようとしていた・・・
第2章〜前田補佐官到着〜
川鍋がブログ制作室を後にしてから間もなく、ブログ管理室に前田亮輔執務補佐官がやってきた。
スタッフ「あ、お疲れ様です、前田補佐官。」
前田「あぁ、お疲れ様です。」
スタッフ「ああ・・・川鍋さんに会いました?」
前田「川鍋さん!?なに川鍋副室長はまだいたんですか?」
スタッフ「えぇ、なんか引っかかるものがあったみたいで。ま、大丈夫だと思うんですけどね。よっぽど川鍋さんの方が心配ですよ、お疲れのご様子で・・・。」
前田「川鍋さん仕事し過ぎだしな。ま、この連休川さんにはゆっくり休んでもらって、その間我々でしっかりコントロールしていきますよ。」
スタッフ「ええ、やりましょう。」
そう言うとスタッフは再びメインモニターに全情報を出し、現在の状況を前田に説明した。
前田「ちょっと待って。あれは何?」
そう言うと前田はメインモニターの右下を指差した。
スタッフ「あれは・・・
スタッフはメインモニターに近づくと先程前田が指差した右下に手を伸ばした
スタッフ「これは、マグネットです。」
スタッフはマグネットをはずした
前田「あぁ・・・そうか。ところで、さっき川鍋さんが“なにかひっかかるもの”って・・・。」
前田は言った。
スタッフ「あぁ、なんか本人もよく分からないと言っていましたけど、大げさに言うと“胸騒ぎ”なんですって。何か感じるものがあったんでしょうかね・・・。」
前田「怖いなぁ川鍋さんの“胸騒ぎ”は。あの方はね、危機管理室情報士官時代にあの「2007Worksビッグバン」を乗り越えた人なんですよ。言わばネット業務危機管理の申し子な訳だ。そんな川鍋さんの“胸騒ぎ”は過去幾多の場面でその危機を速やかに処理するきっかけになったっていう話を聞いた事があるんだ。つまり『当たる』って事だよな。」
スタッフ「え!?そうなんですか?」
前田「ただまぁ、あの方は誰よりも慎重派だから、『第6感』的なものではなく、事前に危機を予測する経験と実力だと思うけど。今日のは少し違うんでしょ?」
スタッフ「えぇ、本人もよく分からないと言っていましたしね。もし本当にマズいと思うんなら、行動に出ているでしょうしね。」
前田「いやいや、もう連休に入っているんだ。何か起きては困りますよ。あの番組みたいに我々が1番テンパりますよ。ま、何も起きないように最善の努力をしないといけないけどね。」
そんな笑い話をしていたその時だった。突如ブログ制作室に緊急行動通達入電のアラームが鳴り響いたのだった。
スタッフ「あ、お疲れ様です、前田補佐官。」
前田「あぁ、お疲れ様です。」
スタッフ「ああ・・・川鍋さんに会いました?」
前田「川鍋さん!?なに川鍋副室長はまだいたんですか?」
スタッフ「えぇ、なんか引っかかるものがあったみたいで。ま、大丈夫だと思うんですけどね。よっぽど川鍋さんの方が心配ですよ、お疲れのご様子で・・・。」
前田「川鍋さん仕事し過ぎだしな。ま、この連休川さんにはゆっくり休んでもらって、その間我々でしっかりコントロールしていきますよ。」
スタッフ「ええ、やりましょう。」
そう言うとスタッフは再びメインモニターに全情報を出し、現在の状況を前田に説明した。
前田「ちょっと待って。あれは何?」
そう言うと前田はメインモニターの右下を指差した。
スタッフ「あれは・・・
スタッフはメインモニターに近づくと先程前田が指差した右下に手を伸ばした
スタッフ「これは、マグネットです。」
スタッフはマグネットをはずした
前田「あぁ・・・そうか。ところで、さっき川鍋さんが“なにかひっかかるもの”って・・・。」
前田は言った。
スタッフ「あぁ、なんか本人もよく分からないと言っていましたけど、大げさに言うと“胸騒ぎ”なんですって。何か感じるものがあったんでしょうかね・・・。」
前田「怖いなぁ川鍋さんの“胸騒ぎ”は。あの方はね、危機管理室情報士官時代にあの「2007Worksビッグバン」を乗り越えた人なんですよ。言わばネット業務危機管理の申し子な訳だ。そんな川鍋さんの“胸騒ぎ”は過去幾多の場面でその危機を速やかに処理するきっかけになったっていう話を聞いた事があるんだ。つまり『当たる』って事だよな。」
スタッフ「え!?そうなんですか?」
前田「ただまぁ、あの方は誰よりも慎重派だから、『第6感』的なものではなく、事前に危機を予測する経験と実力だと思うけど。今日のは少し違うんでしょ?」
スタッフ「えぇ、本人もよく分からないと言っていましたしね。もし本当にマズいと思うんなら、行動に出ているでしょうしね。」
前田「いやいや、もう連休に入っているんだ。何か起きては困りますよ。あの番組みたいに我々が1番テンパりますよ。ま、何も起きないように最善の努力をしないといけないけどね。」
そんな笑い話をしていたその時だった。突如ブログ制作室に緊急行動通達入電のアラームが鳴り響いたのだった。
第1章〜“職人”川鍋の勘〜
「あれ?まだいらしたんですか?」
2009年9月21日、間もなく日付も変わろうかとしていた頃、Acoustic Cinema Art Works統括管理局広報部マルティメディア広報制作委員会ブログ制作室で1人のスタッフがある男に声をかけた。その男はこのブログ制作室で副室長及び有事の際の危機管理責任者にあたる川鍋友義だった。「シルバーウィーク」と呼ばれる大型連休を迎え、Acoustic Cinema Art Works統括管理局に常駐するスタッフも少なくなってきている中、彼が21日までブログ制作室の総責任者を務めていた。
スタッフ「川鍋さん明日からお休みでしょ?もう今日の業務は全て終わりましたから、あとは我々に任せて下さい。この後前田さんも来ますから。」
川鍋は翌22日から少し遅れて連休を取る予定だった。その間は責任者不在となる為、彼は業務を前田亮輔補佐官に引き継いだのだった。
本来引き継ぎ業務を午前中に終え、日次業務を終えた後21時頃までにはブログ制作室を後にする予定だった。しかし川鍋は何かひっかかるものがあってブログ制作室に残っていたのである。
川鍋「あぁ・・・まぁ、帰るけど・・・ちょっとね。」
スタッフ「ちょっと?ちょっとなんです?」
川鍋「いや、別に大したことじゃないんだけど、なんていうか・・・大げさにいうとなんか胸騒ぎがしてね。」
そう、川鍋はいつもとは違う何かに少々ひっかかるものがありブログ制作室に残っていたのだった。それが何かは分からないが、危機管理スタッフとしてあの「Worksビッグバン」を乗り越えた彼の、いわゆる“第6感”というやつが働いていたのだ。
スタッフ「最近忙しかったからちょっとお疲れなだけではないですか?」
そう言うとスタッフはメインモニターに全情報をモニタリングした。
スタッフ「ほら、現在ネット業務は至って健全です。『公式』『お出かけ』『長野』ともに既に日次業務は終了しています。システムも問題なし、各セクション順調に稼動しております。」
川鍋「ん?あれはなんだ?」
そう言うと川鍋はメインモニターの右下を指差した。
スタッフ「あれは・・・
スタッフはメインモニターに近づくと先程川鍋が指差した右下に手を伸ばした
スタッフ「これは、マグネットです。」
スタッフはマグネットをはずした
川鍋「・・・そうだな、少し考えすぎだな。ま、後は前田補佐官に引き継いであるから、前田補佐官の指示に従って運営してくれ。」
スタッフ「はい。良い連休をお迎え下さい。」
そう言うとスタッフは川鍋を送り出した。川鍋は最後にもう1度メインモニターを見ると、ブログ制作室を後にした。
「確かに、疲れているかもな。ま、連休は田舎に帰ってゆっくり休むとするか。しかしなんだろなこの何とも言えない感覚は・・・。何も起きなければいいが。」
心の中でそう呟く川鍋。しかし彼のその感覚はあるとんでもない出来事の予兆である事をこの次点で彼は知る由も無かった。時刻は既に23時30分を回っていた・・・



